ハマチ’s diary

思考の外部化

テナント

最近の僕は歩くことに躊躇しなくなった。以前の僕なら目的の喫茶店に行くために最寄りの外苑前ではなく、渋谷からの徒歩を選択することなど決してなかった。きっと目的地に向かう道を楽しめるようになったからだと思う。駅に降り立ったのは昼を過ぎた頃で、二日酔い気味で朝からなにも食べてなかった僕は軽くパスタを食べることにした。どうやら宮益坂あたりに店があるようだったので、地図アプリに立てたピンに向かって歩いた。駅のそばだったので迷うことはなかったが、見知らぬ店に一人で入る時に起こる発作のせいで扉を開けるのに一瞬躊躇した。案外中は空いていて、入ってすぐに席に案内された。手渡されたメニューを一応見てはみるが、僕は自分の優柔不断を理解しているので、予定通りカルボナーラを選択した。これから喫茶店に行くには丁度良いくらいにお腹を満たしたところで好きなブランドの店に寄っていくことにした。また何か買わされそうだなと満更でもないような浮ついた気持ちで歩いているとすぐにテナントに着いた。床の模様、レイアウトは自分の記憶通りである。間違いない。しかしそこには別のブランドが入っていた。思い入れが薄いのかさほどのショックはなかったが、知った店がなくなると自分の記憶の持ち駒がなくなったようで、少しばかりの寂しさを覚える。まあこれも新しい店を知ることで解消できる程度だ。気を取り直して自分の気に入っているもう一つのブランドの店舗に足を運ぶことにした。

 表参道を歩くキラキラした人たちの多くは予期していなかったのか通り雨から逃げ惑うように屋内へと駆け込み始めた。予報に従って傘を持って歩いていたのは3割といったところか。まあ空を見ればわざわざ傘をさす必要がないのは一目瞭然なのだが。僕はすぐに止むと予想してか、持ち駒を2つ無くしたショックを洗い流すためか、濡れることを選択した。髪を整えると水に溶けた整髪料が手にベッタリと付着した。道を駆ける人がコンビニに傘を買い求めに入った頃、選択を誤ったかと自分を疑い始めた頃、丁度雨が弱まってきた。自意識過剰で優柔不断な僕ではあるが、自分の所謂第六感的な部分は信用に値すると認識を改めることにした瞬間である。f:id:anagura-otoko:20201108195342j:image
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